宮沢賢治と持続可能性

宮沢賢治=童話作家というイメージは、あるいは彼を理解するためにはまちがったレッテルなのかもしれません。私も子供のころに読んでから、彼の作品を久しく読んでませんでした。

b0069365_10153894.jpgそれが、ふとしたことで最近「銀河鉄道の夜」を手に取りました。読んで驚いています。こりゃ~子供だましの話じゃ全然ない。それどころか、ものすごく深淵で、何か「宇宙の真理」というようなものにつながっていく感じがあります。

今日び「宇宙の真理」などというと、だいたい胡散臭いです。なんでこんなに胡散臭いのでしょう。思うに、世の中に流布している「真理」といったものは、だいたいが誰かの都合のいいようにでっちあげられているからではないでしょうか。つまり、人為的、作為的に作られたものにすぎない、人間が勝手にでっちあげた眉つばもの、という感じ。

宮沢賢治のアプローチは違います。この人はすぐれた科学者でもあったのです。農学を学び、それを実践した人でもありますが、そういう表面的なことではない。多分彼には、森羅万象が原子単位で見えていたのでしょう。「水素よりもすきとおって」などという表現が多用されているように、彼は森羅万象を、人間のレンズを通してではなく、本当にありのまま、原子分子レベルで見ていたのではないかと思います。

そうやって、森羅万象をマクロのレベルに落とし込んでつきつめていった先に、普遍としての宇宙の真理があった。だから彼の真理は、人間の汚れたレンズを通さない、ありのままの姿である。こういう姿勢なので、通常は科学と反対にあると思われる宗教に彼が非常に接近していたのもうなづけます。

「銀河鉄道の夜」に入っている、「ビジテリアン大祭」という話がすごくおもしろいです。これは読んで字のごとし、主人公がベジタリアンたちの世界大会に参加する、というお話。そこでベジタリアン派と反対派がディベートをするわけです。この内容が、現在環境派と反環境派をまきこんで起こっているディベートに全くそのままあてはまります。彼は、「環境にやさしく」暮らすということの厳密な意味もわかっていたし、それに反対する人たちの思考回路もわかっていたし、そしてさらに大事なことは、「環境にやさしく」を人間の勝手な解釈ででっちあげたときの胡散臭さにも気が付いていました。確かに現代でも、科学的根拠がなく、24時間テレビみたいなアプローチで来られる「エコ」は胡散臭いです。
賢治にこれができたのは、常に「科学の目」を持っていたからだと思います。視点を原子分子レベルからゆらがせず、人間の手あかの影響を退け続けた。

サステイナビリティー=持続可能性、という言葉が私はどうしても好きになれません。Sustainabilityという言葉を英語の文脈で聞く分にはいいのですが、それが「持続可能性」になって日本語の文脈に入ると、とたんに借りてきた言葉、なんか実感の全然わかない言葉になってしまう。

賢治だったら何と表現しただろう、と思います。少なくとも、持続可能性、なんてあまりにも訳語っぽい無味乾燥な言葉は使わなかっただろう。日本で最初の持続可能性イストであり、思想と実践でそれを追求した人として、もっと血肉化した言葉を持っていたのだろうと思います。



写真:私が読んだのは新潮文庫版です。
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by kinky25 | 2011-03-08 10:05


筆者: 環境庁勤務・一児の母。 生息地: カリフォルニア・サクラメント。  ブログについて: サイエンスとトレンドを融合した、わかりやすいエコ・温暖化・サステナビリティ。コメント歓迎です(除く営業)


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