カーボン・オフセット最終章 ・ マータイさんからの伝言
忘れないうちにマータイさんに教えてもらったことを書いておこうと思います。
最近よく聞くカーボン・オフセット、私も何回か記事にしたのですが、正直、個人的にはしっくり来ていませんでした。確かに、やらないよりはやったほうがずっといいことなのですが、どうしてもひっかかってしまい、もろ手をあげて賛成、という気になれなかったのです。なぜ・・・?
マータイさんが答えを教えてくれました。
彼女が30年以上も前にケニヤで植林を始めようと決意したきっかけの一つが、昔はきれいだった川が、濁流になってしまったたという事実。彼女はショックを受け、なぜそんなことになったのか、原因をたどり、最終的に森(森林破壊)に行き着いたそうです。ケニヤにおいて、清流が濁流になるということは、すなわち飲み水が減る、というのっぴきならない状態を意味します。だから、木を植えることは、飲み水を確保する、ということでもあったわけです。
植林を始めた当初は、いろいろな木を試したそうです。
まずユーカリ。CO2吸収力が高いので、カーボン・オフセット植林としては人気の木だと思います。・・・おそろしく水を吸収し、土地が干上がってしまって失敗。問題外でした。
次に、マツ(Pineと言っていましたが、どの種類か聞き逃した)。実はKiller plantだったことが判明。これを植えたせいで、もともと生えていた植物、住んでいた生物が、根こそぎいなくなりました。残ったのはマツ・マツ・マツ・・・そしてマツ。絵に描いたような単一植物の森になってしまいました。そして、その代償は大きかったのです。
通常、熱帯にある森林(ジャングル)はこのようになってます。植物が「うっそうと」茂ってます。
ジャングルは普通「うっそうと」してます。じゃあ、「うっそうと」を、科学的・生態学的に説明せよ。と言われたら、なんと答えましょう。
美的センスに問題ありな図ですがご辛抱を・・・。熱帯雨林の特徴は二つ。
① 種の数が多い。
② 植物・生物が層をなしている。(高い木から地面すれすれの植物、はたまた地中でうごきまわる虫、細菌まで、レイヤーごとにいろいろな植物・生物が活動している。)
なぜそうなるのかはここでは省きますが、この二つの特徴が、ジャングルを「うっそうと」させているわけです。
さて、うっそうとしたジャングルの地上には、上からいろいろなものが落ちてきます。枯れ枝、枯れ葉、生物の死骸などなど。高層ビルの各階から1階に集められるゴミのようなものなので、かなりの量になります。(上の図ではうすい茶色で表記)マータイさんが仕事していた森では、この層が数センチになるのが普通だったそうです。
この層が、実は大きな働きをしていた・・・・。
ところで、コーヒーをフィルターでドリップする場合、豆が細かく挽かれているときは、お湯はゆっくり、じんわりと豆に染み渡っていきます。そして、下の穴からは、コーヒーがゆっくりと・・・・つーーっ、ぽたっ、ぽたっ、という感じで流れ落ちてきます。
枯れ枝、枯れ葉たちの層は、まさにこの細かく挽かれたコーヒー豆。雨が降ったときに、水分をたっぷり吸い込んで、時間をかけて下の地面にゆっくりゆっくりドリップしていたのです。土壌のすき間をゆっくりドリップできた水は、余計な粒子を含まずとてもきれいな状態になります。まさに濾過されたわけですね。これが地下水脈にたどりつき、湧き水や川という形で、人々の飲み水になっていたわけです。
ところが、マツしか生えてないマツ林では、それがこんなふうになってしまいました。
雨が降っても、裸の地上はそれをコーヒー豆のようにゆっくりドリップすることができません。雨は降ってきたままの勢いで、土砂をまきこみながら地下水脈にたどりつきます。当然濁流。濁流からつながっている湧き水も川も、やぱり濁流。というわけで、Killer plantのマツだけが生えている森からは、きれいな飲み水は生まれてこなかったのです。
ちなみにユーカリもマツも、外国から持ってきた「外来種」でした。マータイさんたちは気がつきました。「一種類の外来種をひたすら植えるような植林は、もともとの熱帯雨林も、森本来が持っていた働きも壊してしまう。私たちがしたかったのは、ただ木を植えることじゃなかった。失われた森を、その働きを、取り戻すことだった。」・・・そして出した結論は、「木を植えるのではない、もともとここに生えていた植物を、もともとあったように植えて、生態系全体を作り直すことが大事なんだ。」
木を植えるのではない、生態系をつくるのだ-----。
これが、私が聞きたかった答えでした。カーボン・オフセットのための植林には、どうしてもこのユーカリ林、マツ林のイメージがあって、それにとても抵抗があったのです。
「木を植える」と「生態系をつくる」、似ているようで全く違います。そして、マータイさんたちの失敗でわかるように、「単一の木を植えただけ」の植林が犠牲にするものは大きいのです。そういう森は、寿命も短いです。
ただ数値で「CO2をXX%削減した」と言いたいがためだけのおざなりな植林が、今後増えないためにも、
「木を植えるのではない、生態系をつくるのだ。」
とてもとても大事なコンセプトです。
最近よく聞くカーボン・オフセット、私も何回か記事にしたのですが、正直、個人的にはしっくり来ていませんでした。確かに、やらないよりはやったほうがずっといいことなのですが、どうしてもひっかかってしまい、もろ手をあげて賛成、という気になれなかったのです。なぜ・・・?
マータイさんが答えを教えてくれました。
彼女が30年以上も前にケニヤで植林を始めようと決意したきっかけの一つが、昔はきれいだった川が、濁流になってしまったたという事実。彼女はショックを受け、なぜそんなことになったのか、原因をたどり、最終的に森(森林破壊)に行き着いたそうです。ケニヤにおいて、清流が濁流になるということは、すなわち飲み水が減る、というのっぴきならない状態を意味します。だから、木を植えることは、飲み水を確保する、ということでもあったわけです。
植林を始めた当初は、いろいろな木を試したそうです。
まずユーカリ。CO2吸収力が高いので、カーボン・オフセット植林としては人気の木だと思います。・・・おそろしく水を吸収し、土地が干上がってしまって失敗。問題外でした。
次に、マツ(Pineと言っていましたが、どの種類か聞き逃した)。実はKiller plantだったことが判明。これを植えたせいで、もともと生えていた植物、住んでいた生物が、根こそぎいなくなりました。残ったのはマツ・マツ・マツ・・・そしてマツ。絵に描いたような単一植物の森になってしまいました。そして、その代償は大きかったのです。
通常、熱帯にある森林(ジャングル)はこのようになってます。植物が「うっそうと」茂ってます。
ジャングルは普通「うっそうと」してます。じゃあ、「うっそうと」を、科学的・生態学的に説明せよ。と言われたら、なんと答えましょう。
美的センスに問題ありな図ですがご辛抱を・・・。熱帯雨林の特徴は二つ。
① 種の数が多い。
② 植物・生物が層をなしている。(高い木から地面すれすれの植物、はたまた地中でうごきまわる虫、細菌まで、レイヤーごとにいろいろな植物・生物が活動している。)
なぜそうなるのかはここでは省きますが、この二つの特徴が、ジャングルを「うっそうと」させているわけです。
さて、うっそうとしたジャングルの地上には、上からいろいろなものが落ちてきます。枯れ枝、枯れ葉、生物の死骸などなど。高層ビルの各階から1階に集められるゴミのようなものなので、かなりの量になります。(上の図ではうすい茶色で表記)マータイさんが仕事していた森では、この層が数センチになるのが普通だったそうです。
この層が、実は大きな働きをしていた・・・・。
ところで、コーヒーをフィルターでドリップする場合、豆が細かく挽かれているときは、お湯はゆっくり、じんわりと豆に染み渡っていきます。そして、下の穴からは、コーヒーがゆっくりと・・・・つーーっ、ぽたっ、ぽたっ、という感じで流れ落ちてきます。
枯れ枝、枯れ葉たちの層は、まさにこの細かく挽かれたコーヒー豆。雨が降ったときに、水分をたっぷり吸い込んで、時間をかけて下の地面にゆっくりゆっくりドリップしていたのです。土壌のすき間をゆっくりドリップできた水は、余計な粒子を含まずとてもきれいな状態になります。まさに濾過されたわけですね。これが地下水脈にたどりつき、湧き水や川という形で、人々の飲み水になっていたわけです。
ところが、マツしか生えてないマツ林では、それがこんなふうになってしまいました。
雨が降っても、裸の地上はそれをコーヒー豆のようにゆっくりドリップすることができません。雨は降ってきたままの勢いで、土砂をまきこみながら地下水脈にたどりつきます。当然濁流。濁流からつながっている湧き水も川も、やぱり濁流。というわけで、Killer plantのマツだけが生えている森からは、きれいな飲み水は生まれてこなかったのです。
ちなみにユーカリもマツも、外国から持ってきた「外来種」でした。マータイさんたちは気がつきました。「一種類の外来種をひたすら植えるような植林は、もともとの熱帯雨林も、森本来が持っていた働きも壊してしまう。私たちがしたかったのは、ただ木を植えることじゃなかった。失われた森を、その働きを、取り戻すことだった。」・・・そして出した結論は、「木を植えるのではない、もともとここに生えていた植物を、もともとあったように植えて、生態系全体を作り直すことが大事なんだ。」
木を植えるのではない、生態系をつくるのだ-----。
これが、私が聞きたかった答えでした。カーボン・オフセットのための植林には、どうしてもこのユーカリ林、マツ林のイメージがあって、それにとても抵抗があったのです。
「木を植える」と「生態系をつくる」、似ているようで全く違います。そして、マータイさんたちの失敗でわかるように、「単一の木を植えただけ」の植林が犠牲にするものは大きいのです。そういう森は、寿命も短いです。
ただ数値で「CO2をXX%削減した」と言いたいがためだけのおざなりな植林が、今後増えないためにも、
「木を植えるのではない、生態系をつくるのだ。」
とてもとても大事なコンセプトです。
by kinky25
| 2007-09-23 14:33
| カンキョウの話。
筆者: 環境庁勤務・一児の母。 生息地: カリフォルニア・サクラメント。 ブログについて: サイエンスとトレンドを融合した、わかりやすいエコ・温暖化・サステナビリティ。コメント歓迎です(除く営業)
by kinky25
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