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岐路に立つキャップ・アンド・トレード

温暖化対策のための政策として、「キャップ・アンド・トレード」はすっかり定着してきたように思えます。ヨーロッパのEU ETS(Emissions trading scheme)という制度は2005年にテストランが始まり、2008年からは第2期に入っています。これに続けとばかりに、各国・各地域で法案が提出され、喧々諤々の議論が戦わされてきました。

2005年ぐらいから活発化したこの動きは、オーストラリアやニュージーランド、カリフォルニア州、そしてアメリカの連邦議会などで、実際に法案が出されるまでになりました。そして私の働いているカリフォルニア州では、AB 32という法案が実際に通り、2012年の開始を目指して法則づくりに入っています。

温暖化ガス規制に向けて、世界レベルで動きが加速するか ---- に見えた、この数年でしたが、ここに来て、オーストラリアの法案は議会で可決されず、アメリカ連邦議会でも今年通過の見込みはだいぶ薄くなる、という状況に変わってきました。

今年の末には、コペンハーゲンでCOP15(京都議定書後の枠組みを話し合う国際会議)があるので、どの国も「コペンハーゲン」を合言葉に、それまでに何らかの制度を確立しようとがんばっているのですが、温暖化ガス規制への風は、ここに来て一気に逆風。アゲインストの風が吹き荒れています。

一番の理由は、世界的な景気の後退です。ただでさえ打撃を受けている産業界からは、これ以上のコストは産業に大きなダメージを与える、という大きな大きな声があがっています。

さらに、中小企業や低所得者層などからも、電気代といったエネルギーの料金があがると経営や生活に大きな打撃になる、という強い反対の声。

「地球にやさしく」「持続可能な未来を」と言うのは簡単ですが、いざ自分の電気料金があがるかもしれない、となると、やはりきれいごとではない人間の面が見えてきます。特にこの不況で、どの国も失業率があがっているため、温暖化政策は、さらに失業率を増やす、という見方をする人も多く、反対派の人たちは「キャップ・アンド・トレードは生活のコストを大幅に上げ、仕事も奪う」というネガティブ・キャンペーンを行っています。

実際には、規制によって得た財源は、中小企業や低所得者保護のために使うこともできるし、制度が始まっていきなり電気代がはねあがるようなプログラムは誰も作らないとは思うのですが、それでも、事を極論化して、賛成派と反対派があからさまにケンカする、というようなあまりよろしくない状況ができてきつつあるように思います。

「今」を基点に、誰が損するのか、という議論がヒートアップしてしまうと(もちろんそれはとても大事なことですが)、そもそもの問題が忘れられてしまう気がして心配です。温暖化の規制は、私たちのためにやるのではない。子供たちのためにやるのだと私は思っています。今自分がいい暮らしをするためになら、子供が犠牲になってもいい、と思える親はそうはいないはずなのですが、もちろん事はそんなに単純じゃない。

感情がヒートアップするなかで、ケンカに勝つか負けるかが目的になってしまわないことを、血が流れないことを(比喩的な意味でですが)、祈るばかりです。正直、少し背筋が寒いものを感じている今日このごろです。
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by kinky25 | 2009-08-23 16:00 | カンキョウの話。

「Ponyo」 - アメリカ版崖の上のポニョ-

「崖の上のポニョ」が、今週末アメリカで封切になりました。

マイリー・サイラスの妹や、ジョナス・ブラザーズ、マット・デイモンなど、吹き替えの俳優陣もヒットさせる気満々の布陣。というわけで、当たり前だがみんな英語をしゃべっているバージョンのポニョでしたが、意外に違和感はなかったです。

さて、私は、実は宮崎映画はほとんどちゃんと見たことがない。そんな私がポニョを見て一番強く感じたのは、「懐かしい・・・」ということでした。

この映画、テクノロジーのお世話にならず、手書きにこだわってつくったと読みました。実際、最近のよくできた超リアルで3Dなディズニー・PIXER映画などに慣れていると、ポニョの2D感はすごく異質に感じます。でも、その2Dな感じが、子供のときに見ていた「カルピス劇場・ハウス食品劇場」(フランダースの犬とか)の時代を思い出させました。また、風景の色使いも、美しいのに恐ろしくて暴力的な海の描かれ方も、街の様子も、単純で素直で勇敢な宗介のキャラクターも、なぜか全てが鮮明に自分の幼少の頃(70年代)を思い出させるものでした。

そして、その「懐かしい」という感覚が、実はすごく大事なんじゃないかと思えました。

最近の子供向けの映画は、どれも本当によくできています。映像はきれいでリアルで、ざらざらしたところは一つもなく、スムーズで無傷。お金もかかっていて、声優も一流。音楽もすばらしい。まさに至れりつくせりで、その映像と音を前に座っていてれば、子供たちは何一つする必要はありません。ただ黙って座っていれば、全てが出てくるのです。そして、映画がいやならゲームもある。

「ポニョ」の2D感は、そういう意味では不自由です。

そして、昔の子供向けアニメは、不自由でした。コマ送りも遅かったし、今みたいにCG満載ではなかったし。でも、2Dの限界ぎりぎりまで情熱をかけて作られた作品たちを見て、当時の子供たちは不自由なんて思わなかったはずです。むしろその情熱に応えるように、その上にできる限りの想像力を羽ばたかせて楽しんだ。そして70年代、80年代にはすばらしいアニメがほんとにいろいろあった。カルピス劇場のシリーズはもちろんだけど、ルパン三世、タイムボカン、まんが日本昔話、ヤマトに銀河鉄道999、ガンダム、キャンディキャンディとか、キューティハニーなんてのもあったな。

そして、子供たちにとって、その「想像力」こそが何よりも大事なものだと、宮崎監督は知っていて、何不自由ない映像を簡単に手に入れられる、そしてそれがいやならゲーム三昧できる現代の子供たちの想像力が、まだちゃんと働くのだということを確認したくて、「ポニョ」をつくったのではないかと、そんな気がしました。

技術的には不自由だけれども、心の中は何よりも自由だった、そんな「ポニョ」の時代(勝手に80年代以前と決定)を知っている私たちの世代が、今社会を動かす第一線であり、子供を育てて社会に出していく年齢になってきているわけだけれど、その世代の責任として、あの「ポニョ」の時代の不自由さを、ちゃんと下の世代に伝えていかないといけないんじゃないか、そんな気がします。

そう強く思えるぐらい、私の子供時代は楽しかった。そしてそれは、モノがたくさんあったからでは決してなかった。今思い出してもきらきらしているあの時代、あんな時代を子供たちに与えてあげたいと思う。
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by kinky25 | 2009-08-17 14:16 | Life/レシピ&small boy!

なぜ魚問題でだけはエコを語らないのか。

最高級のマグロとされるクロマグロは、乱獲のためにその数が激減していて、現在国際社会では輸入禁止が検討され始めています。

記事を見かけるたびにチェックはしていますが、いつ見ても「日本は禁止に反対の姿勢」。そして、そのニュースを取り上げる記事にも、「なぜ禁輸が必要なのか」をきちんと説明する文章は全然見当たりません。ただ事務的に、「欧米が禁輸を検討している。日本は反対の立場である。もうすぐ食卓にマグロが上らなくなる日が来るのだろうか・・・・・。」判を押したように、内容はそれしかない。

おかしいです。


なぜ禁輸しなければならないのか、そこんところを誰もつっこんでいない。

つっこまないのは、それは日本人が聞きたくないことだからでしょう。


b0069365_15213741.jpgなぜ禁輸しなければならないのか。端的に言って、それは日本人が寿司を食いすぎだからです。


・・・・まあそれは大げさだとしても、7月に日本に帰ったときに、日本では「エコ」というコンセプトはすでにかなり日常生活に浸透しているように見えたのに、漁業の世界でだけはなぜか感覚がいまだに前時代的。

マグロは大きなお魚です。成長するのにもすごく時間がかかるそうです。でも、日本人の胃袋を満たすため(なんと世界の全漁獲量の3分の1は日本に来る)、成長しきらないマグロもどんどん捕獲されてしまいます。そんなことをしていたら、個体の数が減るのは当たり前。

サステイナブル(持続可能な)漁業、という考え方もかなり浸透してきているのに、ことお魚に関しては、日本では「こんなに乱獲して、こんなに食べあさっちゃっていいのか?」という議論はほとんどないように思います。もちろん今の勢いで魚を採っていたら、魚は海からいなくなってしまうかも。実際、私の田舎では、近海で姿を消した魚や貝がけっこうあります。近海だけならいざしらず、我々は世界の海を食いつくそうとしているのかもしれません。

漁業にまつわる問題は、なんかどれもキナ臭い。例えば捕鯨問題とか。このクロマグロの禁輸にも、日本たたきみたいな側面があるのかどうかは知りませんが、たとえそういう側面があったとしても、だからといって世界の魚の3分の1を食い漁っている日本人が、世界中の魚の激減に責任がないということにはなりません。

魚って、ほんとは回転寿司みたいな安い値段で食べられるものじゃないはずなんです。お寿司は高級な食べ物。結局それがそれが正しい値付けなんだと思います。


写真:Sustainable Sushi なんて本も出ているよう。Sustainable Sushiというウェブサイトより。
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by kinky25 | 2009-08-12 15:12 | カンキョウの話。

夏なんです

「夏なんです」 (1971年 はっぴいえんど 詞:松本隆 曲:細野晴臣)


田舎の白い あぜ道で 埃っぽい風が 立ち止まる
地べたにぺたんと しゃがみこみ やつらがビー玉 はじいてる

日傘 くるくる ぼくはたいくつ 日傘 くるくる ぼくはたいくつ ・・・・


確か全部歌詞を載せると著作権法違反だと思うので一部だけ。

日本の正しい小学生の夏休み、を思い浮かべるとき、私の頭の中にはいつもこの曲が流れる。


そんなに昔じゃない。20年か30年ぐらい前の夏休みの光景。8月の日差しは白く熱く、太陽が真上にある午後のひととき、地上の生き物はみんな息をひそめる。木陰で、あるいは水の中で。

その一瞬、音が世界から消え、ただ白くまぶしい陽の光と、コントラストをなす黒い陰、それ以外のものは、短くて深い眠りに入る。窓を開け放っているせいで、どこかの家から流れてくる高校野球のラジオ中継、蝉の声、時々思い出したようにふくそよ風で揺れる風鈴の音、が、遠くの夢のように聞こえている。


・・・・・・
久しぶりに、7月という月に、実家に帰っていました。九州というのはあるにしても、驚くほど暑かったです。それも、ねっとり、じっとり、窒息するかと思うようないやな暑さでした。

私が思い出す夏休みは、まだ子供たちは外で遊び回れたし、昼寝をするときは窓を開けて、扇風機ぐらいで大丈夫した。「夏」は子供たちの周りに、となりにありました。

でも、今の暑さ、クーラーがなければ本当に窒息死してしまいそうなぐらいです。「地べたにぺたんとすわりこ」んで遊んでなど、到底できません。「夏」は、締め切って追い出してしまわないと生きていけないようなものになってしまったのでしょうか。小学生のころ、陽のあたる土間に置き去りになった温度計が、33度を差していて驚いたことを今でもよく覚えています。

あのころは、30度を越えたら「すごく暑い!」と思ったものです。

今では、34度、35度は当たり前。すごく暑い!といえば、37度や38度を差すかもしれません。

どこまで上がるのでしょうか。

今の子供たちが大きくなるころ、夏はまだ「生きられる」季節なのでしょうか。もう手遅れなのでしょうか。考えると恐ろしくなります。それでも、できることをやるしかないのですが。
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by kinky25 | 2009-08-01 15:41


筆者: 環境庁勤務・一児の母。 生息地: カリフォルニア・サクラメント。  ブログについて: サイエンスとトレンドを融合した、わかりやすいエコ・温暖化・サステナビリティ。コメント歓迎です(除く営業)


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