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バイオ燃料は悪者か?

遅かれ早かれこういう論争になると思っていましたが、予想以上に早く来たという気がします。

世界的な食糧価格の高騰に直面し、温暖化対策の切り札のひとつとして米国が主導するトウモロコシなどを原料とするバイオ燃料増産に批判の矛先が向き始めた。

b0069365_13314718.jpgバイオ燃料は、石油などと違い、カーボンニュートラルだと言われます。石油が地下深くに閉じ込められていた炭素を、CO2などの形で空気中にばんばん放出してしまうのに比べ、植物からとれる燃料は、もともと空気中にあった炭素を植物が取り込んだものをまた空気中に戻すだけなので、GHG(温室効果ガス)を増やすことにはならない、という論理。

私も、石油よりはいいかなとは思うのですが、いつかはこの壁にぶちあたると思っていました。

それは、生産工場・地球が、どう転んでも一個しかない、という壁です。

生産工場・地球は、拡大もできなければ第二工場をつくることもできない、私たちのたった一つの資産です。

そして、温暖化や生態系破壊が出している危険信号とは、「生産工場・地球はキャパオーバー!」という信号なのです。平均気温が上がったり、珊瑚が死んだりしているのは、その症状の一つ一つにすぎません。温暖化、熱帯雨林の破壊、珊瑚の死滅・・・・という症状をを一つ一つ解決しようとしたとしても、生産工場・地球がキャパオーバーである、という根本的な病気を解決しない限り、問題はなくならないと思います。そのひずみが、バイオ燃料に現れています。

生産工場・地球は一つしかないのに、人間は、その限界を無視して食糧を生産し、森林を切り開き、鉱山を掘り石油を掘り、宅地をどんどん広げ、工業製品を次から次へとつくり、道路をつくり、ビーチリゾートをつくり、ゴミの埋め立てをつくり・・・・・。あれもこれも、好きなだけいろいろなものをつくってきました。そして土地が足りなくなると、熱帯雨林を伐採したりしてさらにつき進みました。

次第に地球はキャパオーバーになり始め、あちこちに傷みが出てきました。土地の砂漠化、公害や汚染、生態系の破壊、温暖化などがその傷みです。それを解決しようと、今度はさらに土地を使ってバイオ燃料用の耕作地をつくり、CO2吸収のための植林を始めたところです。そしたら食べ物を作るための土地が足りなくなって、食糧の値段があがってしまいました。

さて、バイオ燃料は悪者でしょうか?

バイオ燃料が悪いんじゃないと思います。

過積載のトラックと同じ。過積載のトラックはいけませんが、積荷の一つ一つに責任があるわけじゃありません。積みすぎの状態の危険をちゃんと把握しないで、運転している運転手、さらにはそれをやらせている会社が悪いのです。

バイオ燃料は、積みすぎた荷物の一つにしか過ぎません。

地球を過積載の状態にしたのは、他でもない人間です。地球の積載用量をもう一回みんなで検証して、何をどれぐらい積むのが限界なのか今考えないと、手遅れになるという気がしてなりません。


注) 「生産工場・地球」というのはわかりやすい例えとして書きましたが、実際に地球には生産能力というものがあります。興味ある方は、Net primary productionという単語でググってみてください。
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by kinky25 | 2008-04-26 13:16 | カンキョウの話。

カーボン・フットプリント?エコロジカル・フットプリント?

北京オリンピックが近づいてきました。現場の様子が明らかになるにつれ、大気汚染のひどさに懸念を表明する選手が増えているそうですが、ついにトップアスリートが棄権したようですね。

中国の環境汚染の状況は、日本で公害が頻発していた数十年前の様子を想像すればそんなに間違ってはいない、と言われたりします。また、汚染された大気が風にのって日本にまでやってきたり、ゴミが日本海を越えてやってきたり、ということからも、実際に見なくてもその影響の大きさを感じることも多々あるのではないでしょうか。

さて、中国といえば、いまや世界の生産工場です。最近は子供用のグッズを目にしたり買ったりすることが多いですが、私の感じでは95%が中国製。ということは、中国は、他の国の人のためにせっせと工場を稼動して、せっせと環境を破壊しているわけです。もちろん自国のものも作っているだろうし、製造に対する対価を得ている正当な取引なわけですから、問題はないんじゃないの?と言えるかもしれません。

でも、そうやって世界中が中国に押しかけてモノを生産している結果が、汚れた空気であったり破壊された環境であったりするわけです。そのことに対して、世界の消費者の関心はあまり高くないような気がします。カーボン・フットプリント(フットプリント=足跡)、エコロジカル・フットプリントなんて言葉がはやっていますが、中国にはいろんな国のフットプリントがべたべたとついているはずです。だけど、そのつけた足跡がもたらす影響については、足跡をつけた張本人たちは責任を感じていないかもしれない。

環境問題はグローバル。中国から風が運んでくる汚れた大気を、日本は止めることはできません。地球はつながってるのです。遠くにつけた足跡だから、自分には関係ない、ということは絶対にないのです。カーボン・フットプリントなどでは、「自分がどのくらいCO2を排出したか」計算したりしますけど、「自分が世界のどこにフットプリントをつけているか」を知ることも大事だと思います。
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by kinky25 | 2008-03-11 13:07

船場吉兆偽装問題に思う。

吉兆といえば高級料亭。高級料亭が食品の偽装をするなんて、バーバリーがウールの偽装をするようなものです。

けしからん。

というのが一般的な見解でしょう。

吉兆を擁護するわけでもなんでもないのですが、この「偽装問題」、私には常日ごろ疑問だったことがありました。

例えば、「関アジ」「関サバ」。これらって、大分県佐賀関沖でつれたものだけなはずなんですけど、ブームになったときはけっこうあちこちで見ました。それから、昨今ブームの「おとりよせ」。○○産の蟹だの、天然あわびだの、○○産コシヒカリだの・・・。今回の吉兆の場合は、但馬牛や三田牛だったようですね。

トータルではすごい量が出荷されてると思えてしょうがないんですけど、こういう「高級食材」ってそんなに生産キャパがあるんでしょうか??特に天然もの。通販で全国に売るほど獲れるのでしょうか?

もちろん、それらの生産者や流通のみなさんを全部疑ってかかっているのでは、毛頭ありません。ただ、「その食材は、どこから出てきたんだろう??」というのが、疑問で仕方ないのです。元来100しか獲れないところから、300ぐらい出してるような感じがするんです。実際、関サバ関アジはそれが問題になって、後日「証明ラベル」みたいなものができましたよね。

グルメでも何でもいいのですが、消費者は「おいしいもの」に執着するあまり、食べ物には何でも「生産キャパ」があるということを忘れがちです。そして、金さえ出せばなんでも食べられる、さらには提供する会社の競争によって、どんどん安くなるかのような錯覚を抱きがちです。

b0069365_1523396.jpgでも実際はそんなことないわけです。希少な食材は、数が少ないから希少なのであって、大量に出回ること自体がおかしいのです。日本人の大好きなマグロは、成長するのに何十年もかかります。それを日本人は「今お寿司が食べたいから~!」と、世界中のマグロが成長しきる前に獲って食べあさっています。天然のマグロ、世界の海から消えていっています。

刺身なんてそのへんには売っていません。お魚はずいぶん缶詰のお世話になってます。


偽装は悪いことです。でも、「おいしいものが食べたいから」という理由だけで、高級=希少食材を買い漁った結果、食材が少なくなって、偽装せざるを得なくなる、という構図が変わらない限り、また出ると思います、偽装問題。もちろん高級食材に限らずなんでも、「食べつくして」しまえば、同じことは起こると思います。

そして、私たちは「食べつくし」の限界に来ているのかもしれません。最近このことばかり書いているような気がしますが、世界平均で一人当たりにまわってくる食糧は、確実に減ってきています。そしてこの問題は、バブルがはじけるように一気に表面化するような気がしてなりません。大きな理由は日本の食糧の自給率が40%以下だということです。アメリカ一国でも、「もう日本に食料売るのやーめた」となったら、おとりよせどころではありません。

大問題でしょ?なぜ日本では食糧問題に危機感がないのか、私にはとても疑問です。偽装問題は氷山の一角です。「食料資源には限りがある、そして減ってきている」という大きな問題の。
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by kinky25 | 2007-11-16 14:43 | カンキョウの話。

チョコレートとフェアトレード

うちのおばあちゃんは、何かというと「私らの若いときはこんなもの食べれなかった」というのが口癖です。当たり前ですが、それを言い出すと、ほとんどの食べ物がそうです。「卵、肉、バナナ、アイス、etc, etc....。」特にバナナなどは、すでに真っ黒になったのを家族で1本ありがたがってみんなで食べた、という話をしょっちゅうしてました。

もちろん今は何でも普通に食べれます。生産性は向上したし、冷凍や輸送の技術も進歩したし、あと何でしょう。とにかく文明の発達が勝因でしょうか。

b0069365_14493589.jpgでも、「何でも普通に食べれる時代」がそろそろ頭打ちになってきた感があります。私も何度か書きましたが、小麦に始まり、いろんな食糧が軒並み価格高騰中です。私は主に「畑が食料とバイオ製品の間で奪い合いになっている」ことをよく取り上げてますが、もう一つの大きな理由に人口の増加、それも経済成長国の人口の増加があります。例えば中国の人たちの生活水準があがるだけでも、地球規模で必要になる食資源の量に、大きな違いが出ます。

もはや、食料の値段を上げるしか方法がありません。地球が一個しかない、という問題がどう逆立ちしても解決できないからです。でも、地球は今も昔も一個しかなくて、地上の耕作地も同じように限られていたのに、なぜ「今は昔と比べて何でも食べられるようになった、豊かになった」のでしょう?よくよく考えてみると、文明のおかげや技術の進歩もあったんだけど、実は「誰かの犠牲の上に成り立っていた」ことも大きな理由なわけです。犠牲になっていたのは、
① 地球
② 貧しい国の人たち
です。つまり、「普通に食べる」ことができた人たちは、先進国の人やお金持ちだけなわけであって、それは地球と他の人たちの犠牲があったからこそなのです。
① の犠牲は、「生態系の破壊」という形で、そして「エコシステム・サービス」の低下となってじわじわと問題化してます。この犠牲を、エコロジカル・フットプリントと呼んだりします。
② の犠牲は、多くの人々が「飢えに苦しんでいる」という事実だけではなく、労働者、生産者としての彼らを「搾取する」という形でも行われています。カカオ、コーヒー、バナナ、ゴムのプランテーション、縫製工場(ナイキ、ギャップなどの大会社でもしばしば問題になります)などいろいろな所で、たったの今も、不当な賃金や不当な年齢、待遇で働かされている人たちがたくさんいます。そんな言葉はないと思いますが、レイバー・フットプリントとでも呼びたいぐらいです。

② をなくするために、フェア・トレードという考え方があります。安い賃金で過酷な労働条件で、安くモノを作らせないために、ちゃんとプレミアムをつけて製品を買い取り、労働者や生産者にそのお金や利益を回し、サステイナブルなインフラを作る方法です。もちろんフェアトレードの製品は、普通のものより高いです、プレミアがついているのですから。

b0069365_14362676.jpgエクアドルでフェアトレード生産されているキヌア。私も最近食べるようになりました。あれ、フェアトレードだったのかな・・・。キヌアはこちらをCheck

フェアトレードはヨーロッパで最も進んでいます。すばらしい理念だと思います。しかし、イギリスで消費者を調査したところ、大多数の人が「フェアトレードで製品が値上がりしても支持する」と回答したにもかかわらず、実際に値上げされたら買った人はずっと少なかったそうです。

理想と現実のギャップです。

ところで、今度は森永チョコボールが値上げだそうです。消費者としては不満が募るかもしれませんね。でも、地球を犠牲にして安く大量に食べ物をつくってきたツケを払うかのように食料事情が悪くなっている上、よ他の国の人たちの生活を犠牲にして安い食べ物をつくってきたツケをフェアトレードで弁償しようとすれば、値段はさらにあがるのです。(ちなみに森永チョコボールがフェアトレードのカカオを使っているかの情報は、Webでは入手できませんでした)

食べ物の値段、いったいどこまでが許容範囲でしょうか?逆に、①と②の犠牲をなくしたら、値段はいくらになるのでしょうか?うちのおばあちゃんの「私らの若いころは・・・」あたりが適正価格、だったりするのかもしれません。あの時代、森永チョコボールはおそらくそこらへんにはなかったかと・・・。
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by kinky25 | 2007-11-14 14:22 | カンキョウの話。

Hempって。

b0069365_1465346.jpgちょっとちょっと~。これ違法じゃないの~??なんてことがあるわけはないのですが、「Hemp」=大麻、だと思いこんでました。

実はカリフォルニアは、アメリカでも数少ない「治療のためのマリファナ」が認められている州でございます。フランスの大麻事情、というおもしろい記事に、フランスでは「68年の5月革命を経験した世代が親になって、子供のマリファナを容認する空気がある、と書いてありました。この68年の5月革命とは、ものすごくリベラルでヒッピーなムーブメントだったわけですが、サンフランシスコも全米で1,2を争うリベラルでヒッピーな都市です。

ヒッピーとかってやっぱりサイケデリックな方向につながっていますよね。「環境」も、「エコ」が急速にトレンド化しはじめる前は、ヒッピー系の流れを汲んでいたりもしましたよね。そこに"Hemp"が出てくるので、「そういうことなのかな~」と勝手に勘違いしてました。

何のことかさっぱりわからないかと思います。実は"Hemp"が、「エコ素材」として最近急上昇中なのです。日本では「ヘンプ麻」と呼ばれているようです。この間エコバッグをいろいろ調べたときにも、ヨーロッパ系のエコバッグには"Organic hemp製"をたくさん見かけました。でも私が勘違いしていたとおり、このヘンプ麻、大麻とは全然別の種類。マリファナ成分は非常に低いそうです。なのでヘンプでできたエコバッグを持っていてもつかまったりはしません。トリップもしません、当たり前ですが。

Hempは100~120日ぐらいで生育し、いろいろな用途に使えます。繊維として、油として、燃料として。こちらの「すごいぞ!ヘンプ麻」という記事によれば、 ヨーロッパでは建材として使われたり、カナダでは化粧品素材として使われたりもしているようです。栽培が比較的容易であるということと、用途が幅広いということで、その「エコ素材」としての未来はかなり明るいようです。

植物をいろいろな工業用途に遣う試みは、もうずいぶん普及してきています。さとうきびやとうもろこしのバイオエタノール。ケナフを使ったPCの筐体。ただ最近何度か書いたとおり、地球は1個しかないので、その耕作可能面積は限られています。実際バイオエタノールは食物の値段をじわじわ圧迫し始めています。植物の工業転用はすばらしいことだと思いますが、それと同時に「どう土地を管理して使うか」ということがとても大事になってくると思います。

生態系が活動し、人が住み、畑をつくり、家畜を飼い、工業生産をし、CO2削減の植林もし。石油などを減らして、"Renewable"な資源に切り替えるということは、今よりもっともっとたくさんのモノを畑や林からつくらないとならなくなるということです。これを全部地球1個に「サステイナブルに」収めるのは、かなり至難の業かと思われます。

庭のお花をやめて、Hempを植えてみようかな。半分冗談ですが、アメリカの家の大きなお庭はかなり土地の無駄遣いだと思うので、せめてできるだけ有効活用してみようかと思ったりしています。あ、大きな庭っていっても、他の国に比べて、という意味です。家の庭はアメリカ平均ってところです!
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by kinky25 | 2007-11-03 14:45 | カンキョウの話。

南カリフォルニアの山火事は昔により頻繁になったのか? - fire ecology Part2 -

昨日は、「西海岸の森は、数十年に一回の山火事を前提に構成されていて、山火事を経ながら健康や均衡を保っている」ということを書きました。この、生態系と山火事の関係の総合的なパターン(火事のタイプや規模、頻度、森の焼失面積や焼失度合いなど)のことを、fire regimeと言います。

ところで、南カリフォルニアでは2003年にも未曾有の大きな山火事がありました。まだ記憶に新しいと思います。それに、2003年から今起こっている山火事の間にも、もっと小さな規模で毎年のように火事のニュースがありました。これって、山火事が以前より頻繁に、大規模になっているということなのでしょうか?それともまだ、今までどおりのfire regimeの範疇なのでしょうか?今後はどうなるのでしょうか?

諸説があります。「増えているし、ひどくもなっている。」「いや、今までと同じである。想定の範囲内。」科学者たちが、喧々諤々研究と論争を繰り広げているところです。ではまず、「火事が頻繁に、大規模になっているとすれば、それは何が原因なのか?」についてみてみましょう。これにも諸説があります。例えばfire suppression。Land use。それから地球温暖化。

まず、fire suppression(消火、防火活動、計画的な野焼き)が次の火事を大規模にする、という意見について。私はEcologyのクラスで山火事のことを知るまでは、「火事=ダメージ=一刻も早い消火が必要」と思い込んでいましたので、「消火が火事の原因になる」という可能性については考えてもみませんでした。
もちろん、「火事=ダメージ」という方程式は、人間社会にとっては100%Trueです。でも昨日書いたように、山には定期的な火事が必要。なんとニーズが完全に逆転しています。これが、「消火活動が次の火事のリスクを高めてしまう」、というねじれ現象をうみだしてしまうのです。

b0069365_1562586.jpgそもそも「森は火事を必要としている」ということは、150年ほど前、開拓時代にヨーロッパ人が西海岸にやってきたころには誰も知らなかったし、彼らは自分たちの身を守るために、切り開いた森から火事を減らさなければなりませんでした。一番手っ取り早く効率的だったのが、森をGrassland(草原)に変えて牧畜をすることでした。(単位面積当たりにあるfuel(燃えやすいもの)の量を考えたら、草原のほうが火事になりにくく、火事の規模も小さい、ということが想像できると思います)こうして、多くの森が草原になりました。そして森にはfuel (燃えやすいもの)が予定以上に残りました。

また、いったん起こった山火事に対しては、「消火活動」が行われるようになりました。消火活動は、「数十年に一回の山火事」が燃やそうとしていた範囲が全部燃やし尽くされる前に火を消し止めてしまうので、予定より多くのfuelが、次回の火事に繰り越されることになりました。

まとめると、消火・防火活動は、図らずも森の中にあるfuelの量を増やしてしまう。それが、次に起こる火事の規模をよりカタストロフィックにしてしまうという、ということになります。

ここまでだと、「じゃあ消火・防火はしちゃいけないのか?」と思われてしまいそうですが、そうではありません。

次に続きます。

Photo source: http://forestfire.nau.edu/grazing.htm
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by kinky25 | 2007-10-27 14:08 | カンキョウの話。

なぜ南カリフォルニアに山火事は起こるのか? -fire ecology Part 1-

ニュースはまだまだ南カリフォルニアのWildfireで持ちきりです。だいぶ鎮火の方向に向いてきたとはいえ、まだまだ猛威をふるっているところもあるということで心配は続きます。多くの方が家を失い、まだ避難されているのですが、南カリフォルニアのWildfire(山火事)についてもっと知っていただきたいので、fire ecologyのことを少し書きます。多分長くなるので3回ぐらいにわけて。

今回の火事は放火も含まれるということですが、人間が火種を提供しなくても、西海岸の森では定期的に山火事が起こります。元来乾燥した場所ですから。場所、高度、気温、降雨量、木の種類などいろいろな要因が組み合わさって決まるfire interval(大規模な火事が起こる間隔)は、西海岸の生態系では数十年であることが多いようです。

西海岸の森々は、「数十年に一回、全てを焼き尽くすぐらいの大きな火事がある」ことを、何百万年分の経験から学び、システムにインプットしています。そして、気の遠くなるような年月をかけて、「どうしたらその火事から効率よく立ち直れるか」を試行錯誤の中で探してきました。それが現在の(人間が手を入れる前の)森や林の姿です。こういう火事のことをnatural disturbanceとい言い、生態系がそのdisturbanceからどれだけ効率よく立ち直れるか、という強さをresilienceと言います。

何百万年に及ぶ地球システムのQAは、山火事からプラス要因を引き出す技さえもあみだしました。実は、森や林にとっての山火事は、全部が焼き尽くされてゼロになる「ネガティブ要因」だけではないのです。森や林は、山火事から恩恵を受けているのです。全てが灰になるのに、メリットなんてあるの???と思われるかもしれませんが、これがあるのです。
例えば、空気中の窒素やリンが、火事によって土壌に取り込まれ、養分になる。地面に降り積もった灰で、地表の温度が上がる。木の病気や害虫が駆除される。ある意味年末の大掃除のようです。これらのおかげで、火事のあとの「再生」は、健康的かつ効率的に進みます。

また、生態系にいろいろな種類や状態があるように、山火事にもいろいろな種類があります。地面近くを這うように燃えるものもあれば、高い木々の枝を縫って燃えるものもある。当然、地面近くの火事が燃やすものと、高いところの火事が燃やす植物は違います。その妙なる組み合わせによって、火事は森をリニューアルすることもできるのです。例えば、大きく生い茂りすぎている木のおかげで、下に生えている草には日光も当たらないし水や養分も十分に回らない、などという状況は、この大きい木が燃えることによって変わります。

さらに、山火事のもう一つの大きなメリットは、「時々大きな火事が起きることによって、森の中の「燃えやすいもの」の量をコントロールできる」ということです。大きな火事がしばらく起きないと、木は生い茂り、地面は枯れ枝で埋まり、草が生え・・・・。燃えやすいもの(fuel)がいっぱいになってしまいます。この大量のfuelは、次に起こる火事をカタストロフィックな大火事にしてしまう可能性があります。定期的な山火事は、森の「燃えやすいもの」の量を、適量に保つ役割を果たしてきたというわけなのです。

b0069365_13475970.jpgここで終わると山火事を賛美しているように聞こえてしまいますが、それが結論ではありません。
Stay tuned! 次に続きます。

火事に最適化してしまった植物もいます!ワタシ、火事が起きないと次の世代を生み出せないんです!


Source: http://www.cnr.uidaho.edu/range456/hot-topics/fire-ecol.htm
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by kinky25 | 2007-10-26 13:32 | カンキョウの話。

California Native plants

南カリフォルニアでまた大きな山火事が起こっています。なんと53万世帯が非難しているというので心配しています。南カリフォルニアにお住まいのみなさんはいかがお過ごしでしょうか。今シーズンは記録的な降雨量の少なさだと聞きました。また、ジョージア州アトランタでは、旱魃と水不足。温暖化の足音がひたひたと聞こえてくるようです。

水、水、水です。

温暖化でこわいことの一つが、まさにこの水です。世界5,6位を争う経済ブロックにして世界の穀倉地帯、独立してもやっていけるぐらい強大なカリフォルニアの唯一のアキレス腱もこの「水」だと思っています。もともと砂漠ですからね。80%をコロラド川などから「輸入」している上、州内の最大の水源、シエラネバダの雪解け水が、温暖化の影響で激減すると言われています。

う~ん、どうなるのでしょう。

日本は多湿多雨だから、庭で毎日スプリンクラーを回すということはあまりないと思われるのですが、カリフォルニアはどこでもかしこでもスプリンクラーが回っています。全部足したらすごい量の水です。もしスプリンクラーを止めてしまったら、マカロニウエスタンの映画みたいな状況に戻るんでしょうね、多分。現在は、輸入した水を撒いて無理やりあおあおとした庭をつくっているわけで、ぶっちゃけ環境負荷がかなり高いと思われます。

・・・とロジカルに考えたわけではなく、何を植えても失敗した庭に、「不精で水をちゃんとやらない私にも育てられる植物」を探していたら、行き着いた先がNative plantsでした。ほとんどのカリフォルニアNative plantsは、根付くまである程度の水をあげたら、その後はほとんど水をやらなくても大丈夫なのだそうです。もちろん最近の水にまつわるニュースを見るたびに、特にカリフォルニアに住んでいる以上は節水に気をつけないと、と思っているので、一石二鳥なのです。

b0069365_14134577.jpgb0069365_14144662.jpg
















でも考えてみたら当たり前なんですよね。その土地に土着の植物が、その土地に一番適応しているわけだから、乾燥したカリフォルニア土着の植物は、乾燥した状態で十分生き延びれる種類なはずなのです。人間が「お世話」なんてしてさしあげなくても、その土地でちゃーんと自分の力で根を張れる植物たちなのです。

b0069365_14223148.jpg家の裏を鮭が帰ってくる川、American Riverが流れているので、除草剤なども一切使いません。(一軒の影響なんて小さいですけどね)水を最小限に、薬もなしで、というニーズには、Native plantガーデンが最適じゃない!と、悦に入っている今日このごろです。

こちらでは庭にGrassやGroundcoverをよく使います。草っちゃあ草なんですが、Grass、味があってすごく面白いです。かわいいものが苦手な私にはお花より合っているかも。
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by kinky25 | 2007-10-24 14:16 | カンキョウの話。

四角いアタマを丸くする。(古っ!)

先日行ったサンディエゴで、またまたゴミ埋立地(Landfill)ツアーに参加しました。巨大なLandfillで、土地のバカ高いサンディエゴですごいなあと思いつつ、もはや野外工場とでも呼ぶべき大がかりなリサイクル活動を見学しました。

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ここはいろいろ問題のあった施設だそうで、その一つが、この場所がたくさんのNative species(土着の種)の生息地であったこと。その中には、Endangered Species(絶滅危惧種)も含まれているということで、Landfillをつくった後もずっとRestoration(回復)のための活動がいろいろ行われています。ちなみに、サンディエゴにはカリフォルニアでもトップを争うたくさんの数の絶滅危惧種がいるそうです。

このRestorationを促進するために、このLandfillにはなんと専任のBiologist(生物専門家)が雇われていました!環境庁で働き始める前は、ゴミの埋立地でのお仕事、と聞いても、ゴミ収集車を誘導したり、掃除をしたり、とそれぐらいしか思いつきませんでした。我ながら想像力ないな。でも、埋立地にBiologist。なんてクリエイティブなんでしょう。

b0069365_48013.jpgb0069365_491040.jpg生態系と一言に言っても、それは土地土地で大きく違います。家々と言っても個別の家の中身や住人が全く違うように、一つの生態系は私たちが思うよりずっと小さな半径で独自性を保っています。このBiologistは、この土地の生態系を知り尽くしています。その上で、もともとあったNative speciesの生息地を戻そうとしているわけです。それは例えば、埋め立てが終わったLandfillの区画の上に、Native plantsを植えることであったりします。なのでこのLandfillには専用の苗木コーナーがあって、彼が全部それをタネから育てているんです!おもしろいことに、野生のタネは、例えばリスや鼠などの小動物に食べられて、おなかの中を通って出てくることによって発芽しやすくなる、などの特性があるそうです。彼はそういうのを全部知っていて、電子レンジでタネを温めたり、いろいろな方法を駆使して自然の状態に近い環境をつくろうとしているのです。そういうテクニックは、生物学の基礎に経験をブレンドして培われたものなんですね。ここにもあった、匠の技。

先日、Ecosystem Servicesの話をちょっと書きました。我々が野菜や魚を食べられるのも、気がつかないところでいろいろな生物がこまごまとした仕事をしてくれているからだ、と。でも、今のところ、経済のしくみにはこのEcosystem Servicesにお金を払って保全する、という機能がありません。これは大問題です。サービスがどんどん劣化しているのに、手をこまねいてみているしかないんですから。

でもこれからは、LandfillがBiologistを雇う、というような柔軟な発想で、Ecosystem Servicesを守る人たちの雇用を拡大することが必要だと思います。アメリカはこういうところが柔軟でクリエイティブだと思います。拍手。ただ、今のところ経済にはその仕組みがないので、これはまずはお役所の役目でしょうね。(このBiologistも郡か市の職員です)お役所のみなさん(あ、私もでした・・・)、アタマを柔らかくしてあたらしい形のエコ雇用をどんどんつくってください。ダムなんか要らないから、そういう公共事業をやってほしいなあ。
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by kinky25 | 2007-10-20 02:03 | カンキョウの話。

カーボン・オフセット最終章 ・ マータイさんからの伝言

忘れないうちにマータイさんに教えてもらったことを書いておこうと思います。

最近よく聞くカーボン・オフセット、私も何回か記事にしたのですが、正直、個人的にはしっくり来ていませんでした。確かに、やらないよりはやったほうがずっといいことなのですが、どうしてもひっかかってしまい、もろ手をあげて賛成、という気になれなかったのです。なぜ・・・?

マータイさんが答えを教えてくれました。

彼女が30年以上も前にケニヤで植林を始めようと決意したきっかけの一つが、昔はきれいだった川が、濁流になってしまったたという事実。彼女はショックを受け、なぜそんなことになったのか、原因をたどり、最終的に森(森林破壊)に行き着いたそうです。ケニヤにおいて、清流が濁流になるということは、すなわち飲み水が減る、というのっぴきならない状態を意味します。だから、木を植えることは、飲み水を確保する、ということでもあったわけです。

植林を始めた当初は、いろいろな木を試したそうです。

まずユーカリ。CO2吸収力が高いので、カーボン・オフセット植林としては人気の木だと思います。・・・おそろしく水を吸収し、土地が干上がってしまって失敗。問題外でした。

次に、マツ(Pineと言っていましたが、どの種類か聞き逃した)。実はKiller plantだったことが判明。これを植えたせいで、もともと生えていた植物、住んでいた生物が、根こそぎいなくなりました。残ったのはマツ・マツ・マツ・・・そしてマツ。絵に描いたような単一植物の森になってしまいました。そして、その代償は大きかったのです。

b0069365_13434938.jpg通常、熱帯にある森林(ジャングル)はこのようになってます。植物が「うっそうと」茂ってます。

ジャングルは普通「うっそうと」してます。じゃあ、「うっそうと」を、科学的・生態学的に説明せよ。と言われたら、なんと答えましょう。






b0069365_13593078.jpg美的センスに問題ありな図ですがご辛抱を・・・。熱帯雨林の特徴は二つ。
① 種の数が多い。
② 植物・生物が層をなしている。(高い木から地面すれすれの植物、はたまた地中でうごきまわる虫、細菌まで、レイヤーごとにいろいろな植物・生物が活動している。)
なぜそうなるのかはここでは省きますが、この二つの特徴が、ジャングルを「うっそうと」させているわけです。

さて、うっそうとしたジャングルの地上には、上からいろいろなものが落ちてきます。枯れ枝、枯れ葉、生物の死骸などなど。高層ビルの各階から1階に集められるゴミのようなものなので、かなりの量になります。(上の図ではうすい茶色で表記)マータイさんが仕事していた森では、この層が数センチになるのが普通だったそうです。

この層が、実は大きな働きをしていた・・・・。

ところで、コーヒーをフィルターでドリップする場合、豆が細かく挽かれているときは、お湯はゆっくり、じんわりと豆に染み渡っていきます。そして、下の穴からは、コーヒーがゆっくりと・・・・つーーっ、ぽたっ、ぽたっ、という感じで流れ落ちてきます。
枯れ枝、枯れ葉たちの層は、まさにこの細かく挽かれたコーヒー豆。雨が降ったときに、水分をたっぷり吸い込んで、時間をかけて下の地面にゆっくりゆっくりドリップしていたのです。土壌のすき間をゆっくりドリップできた水は、余計な粒子を含まずとてもきれいな状態になります。まさに濾過されたわけですね。これが地下水脈にたどりつき、湧き水や川という形で、人々の飲み水になっていたわけです。

b0069365_14194868.jpgところが、マツしか生えてないマツ林では、それがこんなふうになってしまいました。

雨が降っても、裸の地上はそれをコーヒー豆のようにゆっくりドリップすることができません。雨は降ってきたままの勢いで、土砂をまきこみながら地下水脈にたどりつきます。当然濁流。濁流からつながっている湧き水も川も、やぱり濁流。というわけで、Killer plantのマツだけが生えている森からは、きれいな飲み水は生まれてこなかったのです。

ちなみにユーカリもマツも、外国から持ってきた「外来種」でした。マータイさんたちは気がつきました。「一種類の外来種をひたすら植えるような植林は、もともとの熱帯雨林も、森本来が持っていた働きも壊してしまう。私たちがしたかったのは、ただ木を植えることじゃなかった。失われた森を、その働きを、取り戻すことだった。」・・・そして出した結論は、「木を植えるのではない、もともとここに生えていた植物を、もともとあったように植えて、生態系全体を作り直すことが大事なんだ。」

木を植えるのではない、生態系をつくるのだ-----。

これが、私が聞きたかった答えでした。カーボン・オフセットのための植林には、どうしてもこのユーカリ林、マツ林のイメージがあって、それにとても抵抗があったのです。

「木を植える」と「生態系をつくる」、似ているようで全く違います。そして、マータイさんたちの失敗でわかるように、「単一の木を植えただけ」の植林が犠牲にするものは大きいのです。そういう森は、寿命も短いです。

ただ数値で「CO2をXX%削減した」と言いたいがためだけのおざなりな植林が、今後増えないためにも、

「木を植えるのではない、生態系をつくるのだ。」

とてもとても大事なコンセプトです。
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by kinky25 | 2007-09-23 14:33 | カンキョウの話。


筆者: 環境庁勤務・一児の母。 生息地: カリフォルニア・サクラメント。  ブログについて: サイエンスとトレンドを融合した、わかりやすいエコ・温暖化・サステナビリティ。コメント歓迎です(除く営業)


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