NIMBYとEnvironmental Justice
NIMBYという言葉をご存知ですか?"Not In My Backyard"の略。原発、下水施設、刑務所などの「迷惑施設」は、自分の家の裏庭(近所)にできるのだけは絶対にいや!という心理のことです。「○○建設、絶対反対!」という住民運動、よく見かけますね。裏を返せば、自分の家から遠ければどこでもいいけど、ということなのかな?これは万国共通の感情のようです。
ゴミ処理施設ももちろんNIMBY。とはいえ、昔は今よりは簡単に着工できたので、カリフォルニアにも古いゴミ埋立地があちこちにあります。でもそういう施設が現在40歳、50歳になり、満杯になってどんどん閉鎖されて行っています。一方で、NIMBYイズムや環境アセスメントの影響で、新しいゴミ処理施設を作るのは、たいそう困難になってきました。
人口は増える一方。ゴミの量も、増えることはあっても減ることはない。それなのに、埋立地は減る一方。そこで何が起こるかと言うと、大きな郡(人口が多く、土地が高く、平均年収が高い)では、「ゴミの最終処分場ゼロ」というところが出てきています。処分する場所がないということは、ゴミを「輸出」するしかないので、ゴミをトラックや列車に乗せて、他郡まで運んで処理しなければならず、大きな問題になっています。
しかし、大きい郡は土地が高く、ゴミ処理場を建てるのにも莫大な費用がかかる。さらに、住民は知識もお金もあったりするので、いい弁護士を雇うなりいろんな方法を駆使して、効果的な反対運動を展開することができます。そんなこんなで、ゴミ処理場をつくりたくてもつくれない、という場合がままあります。
でも、ゴミがどんどん生まれてくる以上、処理施設はどこかにつくらないといけません。ある地域で、ネイティブ・アメリカン(インディアン)居住区に巨大なゴミ埋立地計画・・・というニュースを耳にしました。ネイティブ・アメリカンは、長い迫害の歴史のあと、今では特権的な「自治権」を与えられて、自主独立の道を歩んでいます。・・・・といえば聞こえはいいのですが、このニュースに関してはちょっとすっきりしません。
ネイティブ・アメリカン居住区には、やはり貧しい地域が多いでしょう。彼らにとっては、現金収入をもたらしてくれるものなら、カジノでもゴミ処理場でも、何でも歓迎なのかもしれません。でも、「自治権」という名のもとに、州政府などが彼らのやることに口出しできないとしたら、もしかしたら、他の州に作るのよりも安い値段で、質の悪い処理場が建設されても、止めることができないかもしれないのです。逆に言えば、有利に取引をしたいと思っている経営者にとっては、居住区ならうるさい規制もなく口出すお役所もなく、直接交渉できておいしいのかもしれません。
英語にはEnvironmental Justiceという言葉があります。格差社会のアメリカでは、NIMBY施設は歴史的にあからさまに貧しい地区に建てられてきました。でも、貧しい地区の住民は、声を上げたくても、どうやってやるかという知識もなければ、弁護士を雇うお金もない。結局、手も足も出ないままNIMBYを受け入れてきたのです。極端な言い方をすれば、金持ちはゴミを出すだけ。出したゴミも、ゴミ処理施設も、貧乏地域に押し付ける、と。
Environmental Justiceは、その不公平をなくすためのコンセプトです。現在は、ゴミ処理施設の認可をとるにも、その地域の民族分布(白人○%、黒人○%、アジア人○%・・・)、平均世帯収入いくら、など、貧しい地域にNIMBYを押し付けているのではない、という証拠を添付しなければなりません。
でもある意味、アメリカン・インディアン居住区はEnvironmental Justiceも治外法権なのかな・・・・。自主独立はすばらしいことですが、もし州の基準では保障されている「最低限」が、自主独立の居住区では守られないようなことがあったら、せっかくの自主が逆に足かせになるのではないかとさえ思えます。もうちょっとそのへんの法律を調べないとはっきり言えませんが、なんだかとても複雑というか、割り切れない気分です。まあ、根っこをたどっていくと、ゴミ処理施設に限らず、彼らにカジノを経営させていることだって、問題の本質は同じだと思うのですが。
差別だとか格差だとか、アメリカにはそれを撤廃するための試みがいくつもいくつもあるけれど、それって裏を返せば、それだけたくさん作っても尚、なくすことができないほど根深い、ということなんだよな・・・。
ゴミ処理施設ももちろんNIMBY。とはいえ、昔は今よりは簡単に着工できたので、カリフォルニアにも古いゴミ埋立地があちこちにあります。でもそういう施設が現在40歳、50歳になり、満杯になってどんどん閉鎖されて行っています。一方で、NIMBYイズムや環境アセスメントの影響で、新しいゴミ処理施設を作るのは、たいそう困難になってきました。
人口は増える一方。ゴミの量も、増えることはあっても減ることはない。それなのに、埋立地は減る一方。そこで何が起こるかと言うと、大きな郡(人口が多く、土地が高く、平均年収が高い)では、「ゴミの最終処分場ゼロ」というところが出てきています。処分する場所がないということは、ゴミを「輸出」するしかないので、ゴミをトラックや列車に乗せて、他郡まで運んで処理しなければならず、大きな問題になっています。
しかし、大きい郡は土地が高く、ゴミ処理場を建てるのにも莫大な費用がかかる。さらに、住民は知識もお金もあったりするので、いい弁護士を雇うなりいろんな方法を駆使して、効果的な反対運動を展開することができます。そんなこんなで、ゴミ処理場をつくりたくてもつくれない、という場合がままあります。
でも、ゴミがどんどん生まれてくる以上、処理施設はどこかにつくらないといけません。ある地域で、ネイティブ・アメリカン(インディアン)居住区に巨大なゴミ埋立地計画・・・というニュースを耳にしました。ネイティブ・アメリカンは、長い迫害の歴史のあと、今では特権的な「自治権」を与えられて、自主独立の道を歩んでいます。・・・・といえば聞こえはいいのですが、このニュースに関してはちょっとすっきりしません。
ネイティブ・アメリカン居住区には、やはり貧しい地域が多いでしょう。彼らにとっては、現金収入をもたらしてくれるものなら、カジノでもゴミ処理場でも、何でも歓迎なのかもしれません。でも、「自治権」という名のもとに、州政府などが彼らのやることに口出しできないとしたら、もしかしたら、他の州に作るのよりも安い値段で、質の悪い処理場が建設されても、止めることができないかもしれないのです。逆に言えば、有利に取引をしたいと思っている経営者にとっては、居住区ならうるさい規制もなく口出すお役所もなく、直接交渉できておいしいのかもしれません。
英語にはEnvironmental Justiceという言葉があります。格差社会のアメリカでは、NIMBY施設は歴史的にあからさまに貧しい地区に建てられてきました。でも、貧しい地区の住民は、声を上げたくても、どうやってやるかという知識もなければ、弁護士を雇うお金もない。結局、手も足も出ないままNIMBYを受け入れてきたのです。極端な言い方をすれば、金持ちはゴミを出すだけ。出したゴミも、ゴミ処理施設も、貧乏地域に押し付ける、と。
Environmental Justiceは、その不公平をなくすためのコンセプトです。現在は、ゴミ処理施設の認可をとるにも、その地域の民族分布(白人○%、黒人○%、アジア人○%・・・)、平均世帯収入いくら、など、貧しい地域にNIMBYを押し付けているのではない、という証拠を添付しなければなりません。
でもある意味、アメリカン・インディアン居住区はEnvironmental Justiceも治外法権なのかな・・・・。自主独立はすばらしいことですが、もし州の基準では保障されている「最低限」が、自主独立の居住区では守られないようなことがあったら、せっかくの自主が逆に足かせになるのではないかとさえ思えます。もうちょっとそのへんの法律を調べないとはっきり言えませんが、なんだかとても複雑というか、割り切れない気分です。まあ、根っこをたどっていくと、ゴミ処理施設に限らず、彼らにカジノを経営させていることだって、問題の本質は同じだと思うのですが。
差別だとか格差だとか、アメリカにはそれを撤廃するための試みがいくつもいくつもあるけれど、それって裏を返せば、それだけたくさん作っても尚、なくすことができないほど根深い、ということなんだよな・・・。
by kinky25
| 2007-10-04 13:22
| カンキョウの話。
筆者: 環境庁勤務・一児の母。 生息地: カリフォルニア・サクラメント。 ブログについて: サイエンスとトレンドを融合した、わかりやすいエコ・温暖化・サステナビリティ。コメント歓迎です(除く営業)
by kinky25
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