リサイクルの理想と現実。
先日、日本製紙の再生紙の話を書きました。そしたらその直後に、その再生紙の「偽装」問題が発覚しました。何というタイムリーな展開。
再生紙よ、お前もか。
吉兆のときも書きましたが、個人的にはこの偽装問題、会社のモラル、というだけではなくもっと根深い問題を抱えているように思っていましたが、再生紙にまでことが及んで、いっそうそういう感じが強くなりました。
もちろん、偽装した会社を擁護しているわけじゃないですよ、断じて。
「会社」はあくまで利益を追求するのが目的であって、利益が出なければ立ち行かなくなるし、社員にお給料も払えません。ではどうやって利益を得るか。製造業や加工業なら、仕入れたものに付加価値をつけて、それより高い値段で売ることで、利益がでます。当たり前ですが。
この仕組みが回っていくためには、リーズナブルな材料が手に入ること、付加価値をつけるノウハウや技術が会社にあること、が最低限必要です。リーズナブルな材料というのは、それに上乗せした値段をつけても、買える人がちゃんといる程度の値段、ということです。
再生紙。1枚1円なら買う人がいるかもしれませんが、1枚100円ならどうでしょう。厳しいですよね。
でもでも。よーく考えてみると、紙1枚1円、という値段は、「それなりの質の原料が、安定供給されている」という前提がなければ、成立しない値段です。再生紙の製造工程は、負荷が高い、と書きました。汚れたものからきれいなものをつくるのは難しい、と。それを環境にやさしいから(?)といって、「利益追求企業」に任せたら、うまくオペレーションを軌道に乗せられなくて、あろうことか偽装してしまった。
でももし、古紙から再生紙をつくるのが、バージンパルプからつくるのと同じくらいの難易度だったなら、この問題はおこらなかったでしょう。どっちに転んでも、会社の負担は同じだからです。原料を古紙にすることが、「リーズナブルな仕入れをして、それに付加価値をつけて売る」の仕組みを狂わせてしまったわけです。古紙を使ったら、今までどおり1枚1円で売って、おなじぐらいもうけを出すことができなくなってしまった、ということでしょう。(あくまで例えです。日本製紙が再生紙をいくらで売っていたかは知りません)
もちろん日本製紙が一番悪いです。
でも、日本製紙が反省して、心を入れ替えて営業努力をするようになったら、問題は解決でしょうか?私にはそうは思えません。日本製紙とて、利益追求企業です。コストが利益を圧迫し始めたら、そういうオペレーションをやめざるを得ない側面は、確かにあります。
じゃあ日本製紙のやったことは正当化されるのか?正当化はされません。でも、この問題の根本は、「リサイクルから利益を出すのが難しい」という、厳しい現実です。
今までは、「リサイクルに出せばおわり。あー地球にいいことしたなあ」というフェーズだったと思います。これは何も日本だけじゃないです。世界中そうだと思います。でも、リサイクルを一通り広めてみてぶちあたる現実は、「リサイクルは難しい」です。質の悪い原料からいいものを作るのは、えらく難しい、ということ。
じゃあどうすればいいのか。もちろん、日本製紙のような、リサイクルの工程を実行する会社の努力も必要でしょう。でも、サプライヤーや購買する人の意識も変わらないと。古紙のサプライヤーは我々消費者です。原料としての古紙の質を上げるために、どれだけ努力しているでしょう?はたまた買う立場になったときに、再生紙の質の悪さに、どこまで妥協できるでしょう?
そういう意識や取り組みを変えていくことも、大きな意味でリサイクルの工程を改善していくために、必要だと思うのです。例えば私のお友達は、古紙の分別を自主的にすごく細かくやっています。もしたくさんの人がやったら、原料の質がずいぶんよくなるんじゃないかなと思います。
この問題の解決を偽装した会社任せにせず、サプライチェーンの全ての場所にいるみんなで考えることが大事だと思います。そうすれば、違った視点から新しいアイディアも出てくるかもしれない。偽装を指導したような人たちじゃなくて、もっと新しい風を外から入れるのも有効かもしれません。
リサイクルは新しいフェーズに入ったなあ、とつくづく考えさせられる事件でした。もっともっと、たくさんの人のクリエイティビティと参加と努力が求められるフェーズです、これからは。
再生紙よ、お前もか。
吉兆のときも書きましたが、個人的にはこの偽装問題、会社のモラル、というだけではなくもっと根深い問題を抱えているように思っていましたが、再生紙にまでことが及んで、いっそうそういう感じが強くなりました。
もちろん、偽装した会社を擁護しているわけじゃないですよ、断じて。
「会社」はあくまで利益を追求するのが目的であって、利益が出なければ立ち行かなくなるし、社員にお給料も払えません。ではどうやって利益を得るか。製造業や加工業なら、仕入れたものに付加価値をつけて、それより高い値段で売ることで、利益がでます。当たり前ですが。
この仕組みが回っていくためには、リーズナブルな材料が手に入ること、付加価値をつけるノウハウや技術が会社にあること、が最低限必要です。リーズナブルな材料というのは、それに上乗せした値段をつけても、買える人がちゃんといる程度の値段、ということです。
再生紙。1枚1円なら買う人がいるかもしれませんが、1枚100円ならどうでしょう。厳しいですよね。
でもでも。よーく考えてみると、紙1枚1円、という値段は、「それなりの質の原料が、安定供給されている」という前提がなければ、成立しない値段です。再生紙の製造工程は、負荷が高い、と書きました。汚れたものからきれいなものをつくるのは難しい、と。それを環境にやさしいから(?)といって、「利益追求企業」に任せたら、うまくオペレーションを軌道に乗せられなくて、あろうことか偽装してしまった。
でももし、古紙から再生紙をつくるのが、バージンパルプからつくるのと同じくらいの難易度だったなら、この問題はおこらなかったでしょう。どっちに転んでも、会社の負担は同じだからです。原料を古紙にすることが、「リーズナブルな仕入れをして、それに付加価値をつけて売る」の仕組みを狂わせてしまったわけです。古紙を使ったら、今までどおり1枚1円で売って、おなじぐらいもうけを出すことができなくなってしまった、ということでしょう。(あくまで例えです。日本製紙が再生紙をいくらで売っていたかは知りません)
もちろん日本製紙が一番悪いです。
でも、日本製紙が反省して、心を入れ替えて営業努力をするようになったら、問題は解決でしょうか?私にはそうは思えません。日本製紙とて、利益追求企業です。コストが利益を圧迫し始めたら、そういうオペレーションをやめざるを得ない側面は、確かにあります。
じゃあ日本製紙のやったことは正当化されるのか?正当化はされません。でも、この問題の根本は、「リサイクルから利益を出すのが難しい」という、厳しい現実です。
今までは、「リサイクルに出せばおわり。あー地球にいいことしたなあ」というフェーズだったと思います。これは何も日本だけじゃないです。世界中そうだと思います。でも、リサイクルを一通り広めてみてぶちあたる現実は、「リサイクルは難しい」です。質の悪い原料からいいものを作るのは、えらく難しい、ということ。
じゃあどうすればいいのか。もちろん、日本製紙のような、リサイクルの工程を実行する会社の努力も必要でしょう。でも、サプライヤーや購買する人の意識も変わらないと。古紙のサプライヤーは我々消費者です。原料としての古紙の質を上げるために、どれだけ努力しているでしょう?はたまた買う立場になったときに、再生紙の質の悪さに、どこまで妥協できるでしょう?
そういう意識や取り組みを変えていくことも、大きな意味でリサイクルの工程を改善していくために、必要だと思うのです。例えば私のお友達は、古紙の分別を自主的にすごく細かくやっています。もしたくさんの人がやったら、原料の質がずいぶんよくなるんじゃないかなと思います。
この問題の解決を偽装した会社任せにせず、サプライチェーンの全ての場所にいるみんなで考えることが大事だと思います。そうすれば、違った視点から新しいアイディアも出てくるかもしれない。偽装を指導したような人たちじゃなくて、もっと新しい風を外から入れるのも有効かもしれません。
リサイクルは新しいフェーズに入ったなあ、とつくづく考えさせられる事件でした。もっともっと、たくさんの人のクリエイティビティと参加と努力が求められるフェーズです、これからは。
by kinky25
| 2008-01-19 13:57
| カンキョウの話。
筆者: 環境庁勤務・一児の母。 生息地: カリフォルニア・サクラメント。 ブログについて: サイエンスとトレンドを融合した、わかりやすいエコ・温暖化・サステナビリティ。コメント歓迎です(除く営業)
by kinky25
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